最初のパニック発作は、晴天の霹靂のように、前触れもなく突然起こると言われています。
多くの方のお話を伺う中でも、最初の1回は前触れがないケースがほとんどでした。
一方、2回目以降のパニック発作については、初回の時と体験の仕方が異なり、手前に不安感があることが多いです。
では、なぜ不安感がパニック発作につながるのでしょうか?
今日は、その背景にある不安と身体症状の関係性について解説していこうと思います。
緊張する発表の前を思い出してみて下さい。
クラスでの教科書の朗読、文化祭での劇の発表、楽器の演奏発表会など、私たちは子供の頃から繰り返し人前で発表することを体験します。
その時、ドキドキする、お腹が痛くなる、吐き気がする、足が震える、顔が熱くなる、汗が出る、頭が真っ白になる、息がしにくくなるという経験はなかったでしょうか?
こういった症状は、緊張する場面が終わると嘘のようになくなります。
なので、私たちはそれが緊張する場面で一時的に生じるものであることを学習し、病気だとも考えません。しいて言えば、「緊張しやすい性格」と思うくらいでしょう。
ここで、パニック発作の時によく生じる症状を挙げてみます。
・胸の痛みまたは不快感
・窒息感
・めまい、ふらつき、または気が遠くなる
・死への恐怖
・正気を失うことや自制を失うことへの恐怖
・非現実感、違和感、または外界との遊離感
・ほてりまたは悪寒
・吐き気、腹痛、または下痢
・しびれまたはチクチク感
・動悸または頻脈
・息切れまたは呼吸困難
・発汗
・振戦またはふるえ
読んでみていかがでしょうか?
緊張するときによく出る症状に似ていませんか?
実は、不安や緊張が強くなると、先ほど挙がっていたような身体症状は勝手に出てきてしまいます。
専門用語で「逃げるか戦うか反応」といい、生物の生存本能に根差した自然な体の反応として解釈されています。
今度は、皆さんが大草原でライオンに出くわしたと想像してみてください。
冷静に考えている場合ではなく、一目散に逃げるしかありません。
では、走って逃げるためには何が必要でしょうか?
血液を体中に巡らせるために、呼吸と心臓の動きを早くします。
体を緊張させて、素早い動作に対応できるようにします。
動作で熱くなった体を汗で冷やし、動きやすい状態を維持します。
つまり、緊張する場面というのは、「私の身に危険が迫っている」と体が判断し、その場から逃げ出すための準備のために症状が出現しているのです。
不安が強くなると身体症状が出るのは不自然ではなく、むしろ正常に機能していると言えるでしょう。
ただ、パニック障害の方にとっては、身体症状は「発作の予兆」と捉えて恐ろしいものに感じてしまいます。身体症状があると不安になり、不安があると余計に身体症状が強くなり、さらに不安になる、という悪循環を繰り返した結果、パニック発作に至ってしまいます。
大切なのは、緊張する場面での身体症状を、特別なものとして捉えないことです。
ある意味、パニック障害というのは、身体症状の捉え方が変わってしまう病気ともいえるので、今回のように知識を得ていったん立ち止まり、頭の中での捉え方を緩めることで、一時的な体の症状で収まる事を体験していただけたらと思います。
いかがだったでしょうか?
このメカニズムはあまり知られていませんので、まずは多くの方に知っていただけたらと思い、ブログを書きました。
一方で、頭でわかっていても緩められないケースもあるでしょう。
そんな時は、一人で悩まず専門治療を受けることを検討してみてください。
あつた白鳥クリニックでは、パニック障害の本質となる不安感、その中身である身体感覚過敏への専門治療に加え、広場恐怖の克服ための治療を行っていきます。また、パニック障害に対する正しい知識もお伝えしていきます。
お近くに専門の医療機関がない方に向けて、オンラインでの対応もしております。
今後も情報発信をしていきますので、ご興味のある方は一度お問い合わせください。