前回のブログで、パニック障害の不安の本質、その正体である「身体感覚過敏」について解説してきました。
パニック障害の完治を目指すためには、身体感覚過敏を緩める必要があります。
しかし、ここでまた新たな疑問がわくでしょう。
「じゃあ、その本質の専門治療を最初から受ければ、他の治療はいらないのでは?」
実はパニック障害の治療において最初の選択肢となるのは、お薬での治療です。
「飲まなくていいのであれば、なるべくお薬は飲みたくない」と多くの方が考えると思います。
しかし、個人差はありますが、パニック障害と診断を受けた方の多くはお薬が必要です。
今日は、その理由を解説していきます。
パニック障害と診断を受けた方の多くは、パニック発作を経験します。
過呼吸、動機、吐き気、めまい、息苦しさなどの身体症状に加え、「このまま治らずに死んでしまうのでは?」という強い恐怖心も伴います。
無理しないようにと安静に過ごせば、徐々に発作は収まりますので、その場はほっとします。
しかし、いくら体を安静にしていても、「また発作を起こすのでは?」と不安が残ります。
この不安感は、特に初期段階ほど気の持ちようでは落ち着いてくれません。
私たちの心をつかさどる脳が、強い興奮状態になっているからです。
興奮状態を別の言葉に置き換えるなら、「腫れている」といってもいいかもしれません。
どこかを強くぶつけて腫れているところがある、と想像してみてください。
腫れている箇所は、いつもなら痛みを感じないくらいの衝撃でも痛く感じます。
それと同じで、脳もちょっとした変化を警戒し、不安になりやすくなっているのです。
身体感覚過敏の治療は「弱い発作を繰り返し体験して、意図的に不安になりながら不安に慣れる」というものです。専門家と一緒でなければかえって悪化の可能性もある、非常に繊細な治療法です。
いくら完治すると言われても、強い不安を抱えている人がそのような治療を受けようと思えるでしょうか?
パニック障害の初期治療は、脳の腫れを和らげること、つまり少しでも不安を緩めて安心して過ごせる時間を増やすことが最優先です。
精神科のお薬は、脳の興奮状態を和らげ、不安な気持ちを落ち着かせることに役立ちます。
不安な気持ちが落ち着くとパニック発作も起こりにくくなり、脳も「そこまで警戒しなくていいんだ」と認識して興奮状態が徐々に緩み、さらに不安な気持ちが緩まる、という良い循環に入ります。
繰り返しになりますが、初期段階では気の持ちようではなかなか不安は落ち着いてくれません。
そのため、多くの方にとって初期治療ではお薬に頼るのは必要なことです。
頼る=心が弱い、ではありません。
ただし、精神科のお薬は、主治医と患者が二人三脚で適切なものを探していくプロセスが必要です。不安を和らげるお薬は複数あり、かつ副作用の出方も様々だからです。
飲んでみての実感を主治医の先生に報告し、なるべく副作用が少なくて不安が和らぐお薬にたどり着けるまで、繰り返し話し合ってくださいね。
「だいぶ不安が落ち着いて、発作の頻度も減ってきた。でも、まだ再発の不安がある」
この状態まで来たら、専門治療を受ける準備ができたといえるでしょう。
今回はお薬に焦点をあてましたが、初期治療にもう1つ重要になるのが生活習慣の見直しです。
次回のブログでは、パニック障害と生活習慣の関係性に焦点を当てていきます。
あつた白鳥クリニックでは、パニック障害の本質となる不安感、その中身である身体感覚過敏への専門治療を行っていきます。
また、お近くに専門の医療機関がない方に向けて、オンラインでの対応もしております。
今後も情報発信をしていきますので、ご興味のある方は一度お問い合わせください。