これまで、パニック障害の方が抱える不安の本質、処方の必要性、生活習慣との関わりなど、パニック障害についてのブログを何本か書いてきました。
今回は、架空のケースを通して、パニック障害の症状の1つである広場恐怖について考えてみましょう。
【ケース1】
Aさんは20代の会社員の女性。仕事が忙しく残業もこなしながら、プライベートでは家族や友人との付き合いも大事にしておりました。
ある日、いつものように電車に乗って通勤していた際、急な動悸と発汗、窒息感に襲われました。急なことで驚き、「このまま死んでしまうのでは?」と強い恐怖に襲われながら、途中の駅で降りました。
ホームでうずくまっているうちに徐々に落ち着いてきたものの、大事を取ってその日は会社を休むことにしました。しかし、また電車に乗って出勤しようとした際、電車の中で起きた急な動悸や窒息感を思い出し、「電車に乗るとまた起こるのでは?」と不安が高まるようになりました。
自転車で会社に行ける距離ではなく、車の免許も持っていなかったAさんは、家族やパートナーに協力を依頼して何とか出勤していました。気軽に電車に乗れず、友人の前で体調を崩して迷惑をかけるのが嫌で、友人との外出の誘いも断るようになりました。
結果、生活範囲がどんどん狭まっていき、生活の充実感が減ってしまいました。
このまま家族やパートナーに迷惑をかけられないと考えたAさんは、意を決して精神科を受診し、パニック障害と診断されました。
Aさんの場合、動悸や窒息感などのパニック発作に加え、電車が乗れないなどの広場恐怖という症状が併発しています。
広場恐怖とは、一度発作を起こした場所や、長時間拘束されて発作が起きたときに「逃げられない」と感じる場面を避けたくなる症状です。
この症状の辛さは、活動に制限がかかることです。
電車に乗れなくなることで、出勤や友人と会うといった日常で普通にできたはずのことが難しくなってしまいます。また、「迷惑をかけるかも」という不安や、助けてもらっている人への罪悪感から、気持ちがどんどんふさぎ込んでしまいます。
Aさんの治療では、パニック発作や不安感を落ち着かせるためのお薬が出るでしょう。
実際、飲み始めることで徐々に不安感は落ち着いてくるかもしれません。
だからといって、Aさんはすぐに電車に乗れるようになるでしょうか?
何もない時は落ち着いていても、いざ電車に乗ろうとすると、発作の苦しさに加え、周囲から見られることの恥ずかしさなど、記憶がリアルによみがえってきます。そして、電車から離れれば離れるほど怖いイメージが膨らみ、ますます近づけなくなるでしょう。
従って、広場恐怖の克服には処方とは別の専門治療が必要になるのです。
いかがだったでしょうか?今回は広場恐怖の解説のために、事例をご紹介しました。
このAさんの事例を通して、今後も様々な観点でパニック障害の解説を行いたいと思います。
あつた白鳥クリニックでは、パニック障害の本質となる不安感、その中身である身体感覚過敏への専門治療に加え、広場恐怖の克服ための治療を行っていきます。
また、お近くに専門の医療機関がない方に向けて、オンラインでの対応もしております。
今後も情報発信をしていきますので、ご興味のある方は一度お問い合わせください。